主に、思春期をテーマにした、おりぢなる小説置き場。官能小説は置いてないです。






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せいや

Author:せいや
死ぬまで思春期!!を目標に、生きてます。。。
23歳独身♂大学生。
学生気分、イクナイノ?
好きな箴言……「これでいいのだ」
写真は左耳です!!一応言っときます。。。

Yahoo!から引っ越してきますた。
だからといって、そんな白い目で見ないでください。

リンク……フリーです。
コメント……フリーですが、誹謗中傷コメントは削除します。
トラックバック……エロトラバ以外はフリーです。
バトン……受け取りません。どうしてもと言う方は、Yahoo!の方にお渡しください。
キリ番……気にしてませんので、踏んでもスルーしてください。



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笑い姫
 昔々ある国で一人のお様が産まれようとしてました。その国の王様とお妃様は国民からとても慕われていたので、国中の人々は生まれてくる子を楽しみにしていました。城や街では盛大な宴の準備がなされ、おいしそうな料理とたくさんのお酒が運び込まれていました。教会では数多くの人が、元気な子供が産まれてくるようにと、天に祈りを捧げていました。

 色々な国の料理が食卓に並び始め、神父が最後の祈りの言葉を言い、真っ赤に染まった夕日が沈もうとした、ちょうどその時、お妃様の部屋にとてつもなく下品な笑い声が響き渡りました。なにごとかと、大急ぎで王様が部屋に駆け込みました。そこで王様が見たものは、お世辞にもかわいらしいとはいえない、間抜け面をした赤ん坊が、げらげらと笑っている姿でした。医者がいくらおしりを叩いても、赤ん坊は全く泣く気配はありませんでした。一滴も涙を流しませんでした。

「こんな赤ん坊をみたのは初めてだ」

 と、医者は言いました。次第に、お妃様が泣き出してしまいました。泣きながらお妃様はこう言いました。

「こんな醜い子は私の子じゃない、こんな下品に笑う子が私の子のはずがない」

 王様はその場に立ち尽くし、ただ呆然としていました。予定されていたはずの宴会も行われませんでした。



 赤ん坊だったお様はやがて、すくすくと育っていきました。ハイハイができるようになり、不細工な歯が生え、立って歩けるようになりました。ただ、どんな時でもそのお様は笑っていました。とても下品に笑っていました。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。



 またひとつ、ふたつと季節が過ぎ去りました。笑ってばかりのお様はもうじき三歳になろうとしているのに、一言もまともな言葉を話しません。笑うだけしかできません。昨年産まれた二番目のお様はもう、いくつか言葉を話せるようになっているというのに。その頃から人々は、ふたりのを「笑い」と「白雪姫」と呼んで区別するようになりました。もう一人の姫は、童話にでてくる白雪姫のようにかわいらしかったからです。ガマガエルを引き伸ばしたように笑う笑い姫とは、比べ物になりませんでした。笑い姫は笑うことしかできずに、どんどん大きくなっていきました。

 王様はどうにかして、笑い姫を普通の子供にしようとして、国中の優秀な教師を集めて、笑い姫にありとあらゆる教育をしました。しかし、読み書きを教えようとしても、相変わらず笑い姫は笑うだけで、話すことができないし、字も読めるようにはなりません。馬術を教えても馬にまたがることすらできません、算術も剣術も、なにをさせても、笑い姫は全くできませんでした。それに引き換え白雪姫は、全ての家庭教師を驚愕させるほど優秀でした。誰もが彼女のことを神童だと言いました。白雪姫は国民の憧れの的となっていきました。王様も白雪姫のことだけかわいがるようになり、笑い姫の家庭教師は一人もいなくなりました。笑い姫のことを産まれた時からずっと世話をしていた執事のじいだけが、笑い姫の面倒を見るようになりました。



「あっ笑い姫だ、また笑い姫があほ面さげて歩いてるぞ」

「本当だ、あいつまともに口もきけないんだぜ」

「やい笑い姫、なんとか言ってみたらどうなんだよ」

 今日笑い姫は、執事のじいと一緒に街に買い物に来ていたところでした。こうやって街の子供達にからかわれるのはいつものことです。大人達も笑い姫のことをちらちらと見ながら、ひそひそ話をしています。しかし笑い姫は、どんなに馬鹿にされても顔色ひとつ変えずに、いつものように下品に笑っていました。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。

「あはは、やっぱりあいつは笑うことしか能がない笑い姫だ」

「こら、それ以上暴言を言うと、王族侮辱罪で牢屋にぶち込みますよ」

「やべえ、役立たず執事が怒った、逃げろ」

 役立たず執事、いつのまにかじいは、人々からそう呼ばれるようになりました。笑い姫から片時も離れずに、笑い姫の世話をしていたじいは、はたから見れば、他になにもできないから、無理やり笑い姫のお守りをさせられているように見えたのでしょう。でもなんと言われようと、じいは仕事をやめようとはしませんでした。笑い姫を守ることが自分の使命だと信じていました。

「姫様、あなたはとても立派な人間です。怒り、妬み、恨み。人が生きていく上では必ずそういった醜い感情がからんできます。それなのにあなたは、いつでも天使のように笑っていらっしゃる。どんなにつらいことがあっても、笑顔を絶やすことはない。じいはそんな姫様のことを心から尊敬しています」

 じいは口癖のようにそう言いました。じいにそう言われると笑い姫は、いつも以上に大声で下品に笑いました。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。

 買い物をすませ、城に帰る途中で道端に一人の老婆が倒れていました。じいが慌てて駆け寄り、どうしましたかと尋ねました。よく見ると、老婆の体中に黒いあざができていました。

「うっ、うっ、く、苦しい。たす……けて」

 老婆はそう言うと倒れこみ、動かなくなってしまいました。

「これは、この症状は、もしや……」

 じいは城にいる医者を呼び、老婆を診せました。そんなこと絶対にあるはずがない、いや、頼むから違ってくれ、とじいは祈っていました。やがて診察が終わり、医者の口からでてきた言葉は、じいが最も恐れていたことでした。

「黒の悪魔です」

 じいはその場にひざまずき、愕然としました。



 黒の悪魔とは、とても感染力の強い伝染病のことです。全身に黒いあざができて、苦しみ悶えながら死んでいくという症状からその名がつけられました。黒の悪魔に対する治療法はまだ見つかっておらず、遠くの国では、黒の悪魔によって国が壊滅状態になったという話です。

 王様はこの話を聞きつけて、直ちに他の感染者がいないか調べさせ、治療法の研究をさせました。しかし時はすでに遅し、黒の悪魔にかかってしまっている人は街中にたくさんいたのです。黒の悪魔の猛威はもう広がってしまっていたのです。また、黒の悪魔の治療法を研究していた科学者達も、黒の悪魔に感染してしまいました。

 一日に何人もの人が黒の悪魔により死んでいきました。人々は恐怖し、混乱しました。一歩も外に出ないで、家に立てこもる人もいました。どうせ死ぬならと開き直って、泥棒や強盗を繰り返す人もいました。自分で命を絶つ人もいました。全ての人の表情に悲しみと絶望が浮かんでいました。笑う人など誰もいませんでした。ただ一人、笑い姫を除いては。

 黒の悪魔の魔の手は城の中までにも迫ってきました。城の兵士がかかり、コックがかかり、医者まで黒の悪魔に感染してしまいました。王様は黒の悪魔にかかった者を牢屋に閉じ込めました。閉じ込められた人達は、ただ死ぬのを待つしかありませんでした。王様とお妃様と白雪姫そして一握りの家来達は城の離れに避難し、他の人を寄せ付けようとはしませんでした。笑い姫とじいは黒の悪魔に感染する危険が高い城の中に残されました。

 ところが、王様にとって最悪の事態が起きてしまいました。白雪姫が黒の悪魔に感染してしまったのです。王様は城に残っている医者をかきあつめて、どうにかして白雪姫を治そうとしました。王様も白雪姫につきっきりで看病をしました。しかし、黒の悪魔にかかって生き延びた者など誰一人として存在しないのです。そして例外なく、白雪姫も体中に黒いあざができて、悶え苦しみ、死んでしまいました。

 王様はあまりのショックで寝込んでしまいました。毎日白雪姫の肖像画を見ながら、ぶつぶつと独り言を言い、泣きじゃくる日々が続きました。

「ああ、愛しの我が娘よ、どうして逝ってしまったんだ。どうして、どうして……」

 やがて、王様の足の裏に大きな黒いあざができてしまいました。白雪姫を看病している時に、王様にも黒の悪魔が移ってしまっていたのです。もう城の中にまともに動ける医者は残っていなかったし、王様もすっかり生きる気力をなくしてしまっていたので、王様は離れから城の自分の部屋に戻り、一人ベッドで死を待ちました。

「私の人生もこれまでか……」

 王様がぼそっとつぶやいた時、聞き覚えのある笑い声が聞こえました。ふと目を開けて、横を見てみると、笑い姫が下品に笑いながら、お粥を王様に差し出している姿が目に映りました。城のコックもみないなくなってしまったので、王様に食べてもらおうと笑い姫が一人で一生懸命作ったのです。ところが、王様は笑い姫が作ったお粥を手に取ると、それをおもいっきり笑い姫の顔にぶちまけました。

「お前の作った粥など食えるか、人が死にそうな時にゲラゲラ笑いやがって、なんでお前は死なないんだ、私のかわいいかわいい娘の代わりに、お前が死ねばよかったんだ。お前が死ねばよかったんだ、お前が死ねば……うっ、うっ……」

 泣き崩れる王様をよそに、笑い姫は顔についたお粥を払い落とし、国中に聞こえるような大声で笑い出しました。実の父親からとんでもない仕打ちを受けたというのに。誰しもが悲しみのあまり泣くことしかできないこの時期に、世界で一番下品な笑い声を響かせました。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。それを見た王様はさらに怒り狂いました。

「おい、この不届き者を追い出せ、二度と城に入れるな」

 王様は兵士に命じました。兵士は大笑いしている笑い姫を取り押さえ、城の外へ追い出しました。慌ててじいが駆けつけて王様に抗議しました。

「王様、あなたは自分の子供になんということをするのですか、今すぐ姫様を返してください」

「だまれ、あんな奴は私の子供でもなんでもない、あいつは悪魔だ、あいつこそ本物の悪魔だ。あいつは、皆が苦しんでいるのが楽しくて楽しくて仕方がないんだ」

「王様、そんなことはございません、姫様はこのようなつらい時にこそ、笑顔を忘れてはいけないということを伝えたがっているのです。どうしてそれがわからないのですか」

「だまれ、あの悪魔の味方をするというのなら、お前もこの城から出て行け」

 じいは弁解の余地もなく、笑い姫と一緒に城から追い出されてしまいました。



 城から追い出されたじいと笑い姫は、城のはずれの森に小さな家を建てて住みました。木の実を拾って食べ、川の水を汲み、ひもじいながらも二人で力を合わせてなんとか生きていきました。じいは夜中寒さで震えている笑い姫を抱きしめてこう言いました。

「姫様、あと少しの辛抱です。きっといつかみんなが姫様の素晴らしさに気づいてくれるはずです」

 姫もじいの体を抱きしめました。そしていつものように下品に笑いました。つられてじいも笑いました。二人仲良くとっても下品に笑いました。

 森の全ての木から葉が枯れ落ち、本格的な冬がやってきました。寒さはどんどん厳しくなり、食べる物も減っていきました。このままでは生きていけないと思ったじいは、決心して城に向かいました。必死に謝って、王様になんとか姫だけでも城に戻してもらえるようにお願いしようとしたのです。しかし、城でじいが見た光景は、まさに地獄でした。

 王様はすでに黒の悪魔により死んでしまっていました。お妃様の姿も見当たりませんでした。城に行く途中で見かけた街でも、人っ子一人見つかりませんでした。城の中に生きている人間は、指で数えられる程しかいませんでした。そしてその人達も全員、黒の悪魔にかかってしまっていたのです。倉庫番をしていた人がじいに向かって言いました。

「もうこの城に戻ってきてはいけない、ここにいたら、あんたらも必ず黒の悪魔にかかってしまう。この城から北に向かった所に予備の小さな倉庫がある、そこの食料なら食べても大丈夫だろう。この城にも食料はあるが、黒の悪魔の菌がこびりついてしまっている。これは最近解った事だが、黒の悪魔は主に、食べ物を介して伝染するんだ。まあ、いまさら解っても遅すぎるがな。とにかく、あんたらだけでもなんとか生き延びてくれ、この国はもうお終いなんだ」

 倉庫番だったその男はそう言うと、ゆっくりと目をつぶり、そのまま息をひきとりました。じいは涙をこらえながら、急いで城を出ていきました。

 その日の夜、じいは笑い姫に城で起こったできごとを話しました。王様もお妃様も死んでしまったこと、国がほぼ壊滅してしまったこと、健康に生きているのは自分達しかいないことを涙を流しながら話しました。じいは悔しくて、つらくて、悲しくて仕方ありませんでした。それなのに笑い姫は、じいが話している間ずっと下品に笑っていました。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。

「姫様、あなたは悲しくないのですか、お父上もお母上も妹様もお亡くなりになられたというのに。そりゃあ姫様は皆にひどい仕打ちをされたかもしれませんが、それでもあなたには悲しみや哀れみといった感情がわいてこないのですか」

 なんと言われても笑い姫は笑いました、笑い続けました。じいもじっと笑い姫を見つめなおし、涙を拭い、笑い返しました。

「そうですよね、それが姫様の答えですよね。悲しんでも、哀れんでも、泣いても、なにも生まれはしないですものね、笑って少しでも楽しい気分になった方が良いに決まってますよね。だから私も姫様を見習って最期まで笑って生きていくことにします」

 とてもきれいな星空に、二人の笑い声がいつまでも響き渡りました。



 倉庫に入っていた食料は思った程多くありませんでした。これだけで冬を乗り越えるのは、相当厳しそうでした。じいと笑い姫は毎日の食事をできるだけ少なくしました。たとえどんなにおなかがすいても、笑い姫は決められた量より多くの食料は口にしませんでした。ぐっと我慢して、こらえました。凍え死にそうな寒い夜だって、つらそうな顔ひとつ見せずに、下品に笑っていました。

 日に日に、じいの元気がなくなっていきました。あまり食べ物を食べなくなり、自分の分の食べ物を笑い姫に分け与えるようになりました。毎日寝て過ごすようになり、話す言葉も少なくなってきました。ある日じいは笑い姫に言いました。

「姫様、どうやらじいは歳をとりすぎたようです。思えば長いようで短い人生だった気がします。しかし、じいの人生の中で一番充実していたのは、姫様と一緒にいられたこの数年間でした。姫様、もし、じいがいなくなってしまっても、どうか立派に生き続けてください」

 笑い姫はおもいっきり首を横に振りました。笑いながら、じいの手をとり、必死に首を振りました。それでも、残酷なことに、体調は悪くなるばかりでした。

 ある日、じいが目覚めると、食卓の上に豪華なごちそうが並べられていました。台所では笑い姫が、残り少ない食料を使ってせっせと料理を作っていました。じいは慌てて笑い姫に言いました。

「姫様、なんてことするのですか、残り少ない貴重な食料をこんなに使って、残りの冬をどうやって過ごすおつもりですか」

 笑い姫はカレンダーを指さしました。そういえば、最近日付なんて全く見ていなかったことに、じいは気がつきました。

「姫様、もしや……」

 笑い姫は笑いながらうなずきました。

「じいの誕生日を覚えていてくれたのですか。こんな、死にぞこないのじいの為に……」

 笑い姫はできあがった料理を手に取り、じいの口に運びました。

「姫様、じいは無駄に長年生きてきましたが、姫様の料理はじいが今まで食べ中で一番おいしくございます。今日の感動をじいは決して決して忘れません」

 そのあと、じいは笑い姫の作った料理を食べながら、じいがまだ若かった頃の話や、王様とお妃さまの出会いの話、笑い姫がまだ小さかった頃の話をしました。話をしている時のじいは、とてもいきいきとしていました。笑い姫もとても楽しそうに、じいの話に耳を傾けました。二人は幸せいっぱいでした。でもその日が、じいが元気に話した最後の日になってしまったのです。

 次の日、笑い姫は目が覚めるとすぐに、じいを起こしにいきました。昨日の話の続きを聞かせてもらいたかったのです。しかし、じいが目覚めることはありませんでした。じいは安らかに、天寿を全うしたのです。笑い姫の大好きなじいには、もう二度と会えないのです。笑い姫は一人ぼっちになってしまったのです。

 それでも笑い姫は、それでも、それでも、大きな声で、天国にいるじいに届きそうな大きな声で、下品に笑いました。涙は流しませんでした。悲しそうな顔すらしませんでした。ただただ、笑い続けたのです。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。



 時がたち、長かった冬も終わりをつげようとしていました。寒さもほどほどに和らぎ、鳥のさえずりが聞こえ、つくしんぼうも顔を出しました。笑い姫は食べられそうな草花をつみ、料理して食べました。笑い姫はどうにかして、冬を乗り越えていたのです。

 だんだんと暖かくなり、過ごしやすい陽気になってくると、笑い姫は皆のお墓を作り出しました。じいの墓、王様の墓、お妃様の墓、白雪姫の墓、城や街の人達のお墓も作りました。笑い姫がお墓を作ると、必ずそこにワインレッドの下品な花が咲きました。今では、その花達が笑い姫の唯一の友達でした。笑い姫は毎日毎日、一生懸命お墓を作りました。

 やがて、春が過ぎ、夏がきました。笑い姫はその頃にはようやく、皆のお墓を作り終えていました。お墓の周りには、ワインレッドの下品な花が咲き乱れていました。笑い姫は、その花達と遊んで日々を過ごしました。

 雨が降らない時期が続きました。だんだんと、川の水も減っていきました。暑さもどんどん増していきました。そのままずっと、ずーっと雨の降らない日が続きました。笑い姫の運命は、なんと過酷なことなのでしょう、何十年に一度の乾期おとずれたのです。

 もうすっかり、川の水は涸れてしまいました。草花も枯れていきました。笑い姫の友達だったワインレッドの下品な花も、一本一本と枯れていってしまいました。笑い姫は喉がからからになりながらも、残っていた水を全部、花達にかけてあげました。しかし、笑い姫の想いもむなしく、笑い姫の最後の友達が、枯れてしまいました。

 生まれてからずっと、下品に笑い続けていた笑い姫は突然、笑うのをやめました。そして、なんということなのでしょう、今までずっと泣いたことがなかった笑い姫が泣き出したのです。大粒の涙をぼろぼろこぼし、ずっと休むことなく泣き続けたのです。

 次の日も笑い姫は泣き続けました、また次の日も、そのまた次の日も、ずっと、ずーっと泣き続けました。何も食べずに、何も飲まずに、その場から一歩も動かずに何日も何日も、泣き続けました。



 雨が降り出しました。ようやく乾期が終わったのです。川に水が流れ、動物達も活気をとりもどし、草花も元気になりました。しかし、笑い姫の姿はありませんでした。そのかわりに、大きな池と、その真ん中に下品な噴水ができていました。池の周りには、ワインレッドの下品な花が咲いていました。そして不思議なことに、それからどんなに乾期が続いても、その池の水が涸れることはありませんでした。ワインレッドの下品な花が枯れることもありませんでした。



 また幾年もの月日が過ぎた日のことでした。一人の若者が下品な噴水のある池の前に瀕死の状態でたどりつきました。若者の腕に黒いあざが見えました。そうです、この若者は黒の悪魔に感染してしまっていたのです。

 笑い姫が住んでいた国から東にずっと行った国でも、黒の悪魔が猛威を振るっていたのです。この若者は感染する前に逃げようと決意して、国を出たのですが、その時すでに黒の悪魔は若者の体の中に潜んでいたのです。若者は体中に黒いあざができ、苦しみ悶えながらここにたどり着いたのです。

「はあ、はあ、どうやらここが俺の墓場らしいな、こんなろくでもない奴が作ったような下品な噴水と、気分が悪くなるような色の下品な花に囲まれて俺は死ぬのか、なんとも情けない最期だぜ」

 若者は池の水をすくって飲み、花を摘んで匂いをかいでみました。水は泥のような味がしたし、花は肥溜めに似た悪臭を放っていました。若者は小声でチクショウと言い、目をつぶりました。そうすると、今までの人生の記憶が走馬灯のように駆け抜けていきました。パン屋の親父が眼鏡を逆さにしてかけてたこと、日曜日のミサで神父が大きなおならをしたこと、えらそうな大臣が転んだ時にかつらがとれてしまったこと……おや、なぜでしょう、こんな時に若者の頭に浮かんでくる事は、楽しかったことや、おかしかったことだけです。若者は次第に耐えられなくなり、大声で笑い出しました。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。若者は夜があけるまで笑い続けました。

 朝日が昇り、若者はようやく笑い終わりました。そして、自分の体が楽になっているのを感じました。ふと、自分の腕を見てみると、昨日まであった黒いあざが消えているのを発見しました。

「なんということだ、黒の悪魔が治った、この水と花のおかげで黒の悪魔が治ったんだ」
 若者は飛び跳ねて喜びました。そして池の水をびんに入れ、ワインレッドの下品な花を摘みました。今、花の匂いをかいでみると、とても心地よい香りがしました。

「この水と花を持ち帰って、国の皆を助けなくちゃな」

 若者は意気揚々と自分の国に帰っていきました。とても下品に、大声で笑いながら。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。



 今でもこの世界のどこかに、誰も病気をしない国があります。その国には、たくさんのワインレッドの下品な花が咲いていて、国の人達は皆いつも、とても下品に、大声で笑っているそうです。ケラケラ、ゲラゲラ、ワハハハ、ガハハハ。

   おわり。



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